閉じた道
奈緒は知床半島の細い道でトラックを止めた。前の道には雪が高く積もり、後ろも白くなっていた。少し先には、道を閉じる門が見えた。門のそばには、小さな小屋があった。奈緒は毎年、この道を通っていたが、こんな雪は初めてだった。
トラックの荷台には、正月のおせちが箱いっぱいに入っていた。朝までに届ける約束だった。奈緒は窓の雪を手で払い、もう一度、門を見た。小屋までは二十歩ほどだったが、風で足元が見えなかった。時計は四時を少し過ぎていた。奈緒は水を一口飲んだ。水の入ったびんは、もう軽かった。
車の中は暖かかった。奈緒はここで雪がやむのを待とうと思った。だが、外へ出てトラックの後ろを見ると、雪が排気口をふさいでいた。エンジンをかけたままでは危ない。奈緒は車に戻り、エンジンを止めた。急に静かになり、指先が冷えてきた。奈緒は厚い上着を着て、荷台から長いロープを出した。
ロープの一方をトラックに結び、もう一方を腰に結んだ。奈緒は雪かきの棒で前の雪を押した。道の端では棒が深く入った。そこには雪に隠れた溝があった。奈緒は棒を持ち直し、門まで道の真ん中を歩いた。門の横には、人が通れるせまい所があった。奈緒はそこを通り、小屋の戸を引いた。戸は開いた。
小屋には屋根があり、風が当たらなかった。奈緒はロープを腰から外さず、外の戸口に小さなこんろを置いた。持ってきた雪をなべに入れ、火をつけた。雪が水になるまで、奈緒は白い息をなべにかけた。火を消してから、奈緒はなべを小屋の中へ運んだ。時計は四時半だった。奈緒は戸を閉め、温かい水を両手で持った。