市場
大阪の小さい食べ物の店に、女がいる。女は少し前に町へ来た。小さい台所がある。言葉を少ししか知らない。今晩、となりの人が来る。店はすぐ閉まる。
女はたまごの所へ手を出す。「これ、ください。」男は牛乳を女の前に置く。「これですか。」女は言う。「いいえ。」
女はまた、たまごの所へ手を出す。「これ、ください。」男はパンを女の前に置く。「これですか。」女は言う。「いいえ。」男は少し笑う。女も少し笑う。
女はまた手を出す。「これ、ください。」男は大きい魚を女の前に置く。「これですか。」女は言う。「いいえ。」男は魚を見る。女も魚を見る。男は魚を戻す。
男はたまごを手で取る。「たまごです。」男はゆっくり言う。「たまご。」女は言う。「たまごう。」男は言う。「たまごです。ゆっくりでいいです。」女は言う。「たまご。」男は言う。「はい、たまごです。」
女は言う。「これ、いくらですか。」男は言う。「たまごは二つです。お金は一つです。」女はお金を出す。男はたまごを二つ、女のかばんに入れる。「ありがとう。」女は言う。「はい。」男は言う。
女は店を出る。道で言う。「たまご。」家の戸の前で、また言う。「たまご。」階段の上に、となりの人がいる。