二時のおにぎり
仙台の小さな店で、美咲は夜の仕事をしている。今日は金曜日で、明日は休みだ。店の時計は午前一時五十分を指している。美咲は店の前を見て、机を拭く。
二時になると、ドアが開く。健が入ってくる。健は毎晩、二時に来る。いつも同じおにぎりを一つ買う。
「こんばんは。今日もおにぎりですか」
「こんばんは。はい、今日も同じおにぎりを一つください」
「はい。少し待ってください」
美咲は冷蔵庫を開ける。おにぎりは一つしかない。美咲はおにぎりを取って、健の前に置く。
「今日は一つだけです」
「一つで大丈夫です。いくらですか」
「百二十円です」
健は財布を出す。百円を一つと、十円を二つ、台の上に置く。美咲はお金を取って、袋におにぎりを入れる。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございます」
健は入口の近くで止まる。外は雨が降っている。健は窓の外を見る。
「雨ですね」
「はい。傘はありますか」
「ありません。少し待ってから帰ります」
「店の中で待ってください」
健は小さな椅子に座る。美咲は時計を見る。二時十分になる。店には二人しかいない。雨の音が聞こえる。
「美咲さん」
「はい」
「明日も、同じおにぎりはありますか」
「あります。明日も一つ置きます」
「では、明日も二時に来ます」
健はおにぎりの袋を持つ。雨はまだ降っている。健はドアを開けて、店の外へ出る。美咲は一つのおにぎりを、冷蔵庫の中に置く。