鉄板に重なる広島のお好み焼き
広島のお好み焼きは、材料を全部一緒にして焼く料理ではない。薄い生地の上に野菜、肉、めん、卵を順に重ね、鉄板の熱で一枚にする。大きな鉄板の前では、重なっていく様子も食事の楽しみになる。
まず、小麦粉を水でといた生地を、鉄板に丸く薄く広げる。その上に細く切ったキャベツを高く置き、もやし、天かす、ねぎなどを重ねる。一番上に豚肉を並べ、少し生地をかけたら、へらで全体を返す。
返した山は高く、少し不安定に見える。しかし、へらで軽くおさえながら焼くと、キャベツから水分が出て、山はだんだん低くなる。肉は鉄板の側で焼け、野菜は中の熱でやわらかくなる。
別の場所で、そば、またはうどんを焼く。広島ではそばを選ぶことが多く、めんにはソースをからめる。焼いためんの上に野菜と肉を移し、丸く広げた卵の上へ置く。卵が焼けたら返し、甘いソースをぬって、青のりなどをかける。店や家庭によって材料と順は少し違うが、重ねて焼く基本は同じだ。
食べる時は、鉄板の上でへらを使い、一口ずつ切って口へ運ぶ方法が広島らしい。熱い一口を少し待つ間にも、鉄板の上では下の部分が焼け続ける。皿に取り、はしで食べてもよい。昼にも夜にも食べられ、肉、野菜、めんが入るため、一枚で十分な食事になる。
この形のもとには、戦争の前からあった、小麦粉の生地を薄く焼く食べ物がある。戦争後の広島では、食べ物が少ない中、生地にキャベツなどを重ねる食べ方が広がった。その後、そばやうどんも加わり、今のお好み焼きに近い形になった。安い材料から始まった一枚は、町の回復とともに、広島の日常の味になった。
へらが一枚を切ると、薄い生地から卵まで、重ねた順が切り口に残る。