パンが大きくなる店
朝、ミナは祖母のパン屋にいる。今日はミナが店の仕事を始める日だ。店にはパンと時計と小さい机がある。時計は昨日から止まっている。祖母はパンを作り、ミナは店を開ける。
「おばあちゃん、この時計はどうするの」
「あとで直すよ。まずパンを見てください」
「パンはもうできるの」
「まだだよ。この店のパンは、店の中で誰かが嬉しいと、大きくなるんだ」
ミナはパンを見る。パンは小さいままだ。祖母はパンを一つ、店の前に置く。そこへ客が来る。
「おはようございます。パンをください」
「おはようございます。どのパンがいいですか」
「このパンがいいです。いくらですか」
「二百円です」
客はお金を出す。ミナはパンを袋に入れる。客はパンを見て、少し笑う。
「このパンは、かわいいですね」
「ありがとうございます」
「食べるのが楽しみです」
客が店を出ると、パンが少し大きくなる。ミナは目を大きくする。
「おばあちゃん、本当に大きくなった」
「そうだよ。誰かが嬉しいと、大きくなるんだ」
「では、私も嬉しいです」
「何が嬉しいの」
「今日からここで働くことです。それに、パンが大きくなったことです」
ミナがパンを見ると、パンはまた大きくなる。祖母は笑って、時計を手に取る。
「時計も直すよ」
「今ですか」
「今はパンを焼く時間だよ」
ミナは時計を机に置き、パンを一つ持つ。店の中に、焼けたパンの音がする。