まちがえた部屋 福岡の青波高校で四月の授業が終わると、一年生の女子生徒、陽菜は中古のカメラを持って二階へ行った。今日は写真部に入る日で、同じクラスの男子、空も写真部にいるはずだった。陽菜は三週間、空に「おはよう」以外の言葉を言えず、今日は写真の話をするつもりだった。 壁には「写真部はこちら」と書いた紙があったが、その紙は半分落ちて、違うドアを示していた。陽菜は息を大きく吸い、そのドアを開けた。 「入ってください」と、二年生の女子、梨花が言った。部屋の中では、男子の蓮が紙の王冠をかぶり、ケーキの前に立っていた。陽菜が「写真部に入りたいです」と言うと、梨花は目を丸くした。「ここは演劇部です。写真部は隣ですが、来たついでに一分だけ助けてください」 蓮は王冠を陽菜の頭に置いた。「女王の役です。僕がケーキを取ったら、止めてください」 「そんな役、できません」と陽菜は言った。 「言葉は一つだけです。『それは私のケーキだ』です」と梨花が言った。 蓮がケーキを持ち上げると、陽菜は小さな声で言った。「それは私のケーキだ」 「聞こえません」と蓮は言い、ケーキを口の近くへ持っていった。 「それは私のケーキだ。置きなさい」と陽菜が大きな声を出すと、蓮は本当にケーキを落としそうになった。梨花は笑いながら、「今の声なら、教室の外まで聞こえます」と言った。 梨花は参加する人の紙を見せた。「今日中に三人の名前を出さないと、演劇部はなくなります。今は私たち二人だけです」 そのときドアが開き、空が顔を出した。「陽菜さん、写真部の集まりが始まります。一緒に来ませんか」 陽菜はカメラを見てから、紙の王冠を見た。梨花は何も言わず、参加する人の紙を机に置いた。 陽菜はその紙に自分の名前を書いた。「ごめんなさい。私は演劇部に入ります。でも、写真も続けます」 「では、最初の仕事があります」と梨花が言った。「三人の写真が必要です」 陽菜はカメラを空に渡し、「では、演劇部の最初の写真をお願いします」と言った。